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【大阪大学】第12回 地域医療構想を踏まえたこれからの医学教育

今回は大阪大学での取り組みについてご紹介します。

文責:大阪大学医学部医学科教育センター 渡部 健二 センター長

大阪大学医学部の使命は、大阪大学の使命「知の創造、継承及び実践」とモットー「地域に生き世界に伸びる」に則り、「地域医療に貢献し、世界をリードする医師・研究者の養成」である、と定めています。ここにおける「地域医療」とは「へき地医療」ではなく、本学が位置する京阪神地区に根差した医療を意味し、附属病院と京阪神地区の関連病院が連携しながら、世界をリードする医師を養成するための専攻医、臨床研修医、医学生の教育に従事しています。
専攻医の教育は専門プログラム毎の対応となりますが、臨床研修医および学生の教育は附属病院・医学科と関連病院との包括的な連携が求められます。附属病院の臨床研修については、臨床研修管理委員会を1年に3回開催し、附属病院および関連病院(協力型臨床研修病院)が一丸となって臨床研修に関する問題を検討し、離島研修の導入や、附属病院と関連病院で研修するいわゆる「たすき掛けプログラム」の見直しなど進めてきました。コロナ禍で委員会の開催が一時困難となりましたが、2021年に医学科講堂でハイブリッド講義用に新しく導入された機材を用いて対面とウエブのハイブリッドで委員会を開催出来るように変更し、現在では安全に委員会を運用しています。
医学生が十分な臨床経験を積むには実際の患者診療への参画が不可欠であり、本学においては診療参加型臨床実習を合計で44週導入しています。附属病院での高度先進医療と関連病院でのcommon diseaseをバランスよく経験出来るよう各診療科が実習の構成を工夫しています。関連病院の先生方に責任ある教育を遂行していただくため、臨床教授制度を導入しています。経験の質保証が今後の課題として考えており、医学モデル・コア・カリキュラムに示された臨床実習の到達目標を医学生が経験したか確認するチェックシートを作成し、臨床実習の途中および終了の時点で研究教育調査室(Institutional Research)がチェックシートの回収および集計を行い、到達目標を医学生が段階的に達成しているか確認しています。なお、地域医療の経験を希望する学生には、6年次前半の選択実習期間で経験する機会を提供しています。
以上の専攻医、臨床研修医、医学生における教育を一貫して提供するには、卒前から卒後の教育におけるシームレス化が不可欠です。本学では2014年度より医学生の教育を担当する医学科教育センターと専攻医、臨床研修医の教育を担当する卒後教育開発センターが機能的統合を果たしました。上記チェックシートは、臨床研修で使われるEPOCを参考にして医学生の教育に導入されたものです。臨床と研究は医学の発展における両輪です。本学は世界をリードする研究者の養成にも注力していますが、卒前で培われた基礎医学研究者育成のプログラムを臨床研修にシームレスに展開する大阪大学MD研究者育成研修コースを2022年度より導入しています。

質問 ※「+」をクリックすると詳細がご覧いただけます。

診療参加型臨床実習が合計で44週とのことですが、臨床実習は全体でどの程度行っているのでしょうか?

早期臨床体験実習を合わせて69週です。

各診療科が、大学病院の高度先進医療と関連病院でのcommon diseaseをバランスよく経験できる実習の構成を工夫、とありますが、一連の実習で行うのでしょうか?診療科ごとの構成の実例をいくつかお示しいただけると参考になります。

診療参加型臨床実習は4週間ごとのローテーションで、附属病院と関連病院のバランスは、各診療科に任せています。たとえば、消化器外科であれば2週間を附属病院、残り2週間を関連病院で実習します。消化器内科であれば3週間を附属病院、残り1週間を関連病院で実習します。

医学生の臨床実習到達目標をEPOCを参考にしたシステムで行っているとのことですが、この卒前情報は卒後大阪大学附属病院で臨床研修を行う際にも利用されているのでしょうか?

現時点では利用しておりませんが、今後は利用したいと考えております。

研究教育調査室(IR)の「到達目標の達成段階」に関して具体的な解析をお聞きしたいです。

臨床実習の途中(5年次夏休み)と終了(6年次10月)の2段階で回収し、それをIRで集計することで、到達目標を段階的に達成していることを確認しています。

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