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*第36回* (R6.10.9 UP) | ![]() |
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今回は熊本大学での取り組みについてご紹介します。 |
地域医療構想を踏まえたこれからの医学教育 | ||||||
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はじめに 本シリーズ初回のテーマは、「地域医療を支える国立大学医学部の役割」と題され、熊本大学から地域医療システム学寄付講座の黒田豊特任教授および竹屋元裕医学部長による「熊本大学医学部における地域医療人育成への取り組み」が2014年3月に公表された(https://www.chnmsj.jp/chiikiiryou_torikumi24.html)。2009年度から始まった熊本県の医師修学資金貸与制度および翌2010年度から始まった地域枠推薦入試について紹介し、2009~2013年度の制度利用者数、およびを導入したこと、地域医療教育に連続性が欠けることを問題点として挙げ、新カリキュラムでは地域医療教育に係る早期体験実習や高学年で必須の臨床実習を行うことを予定とした。 18歳人口の急減と都道府県別減少率および医学部受験者・入学者・卒業者の特異性 文部科学省による「高等教育の在り方に関する特別部会」(2023年11月~2024年6月)の資料によると、人口統計および人口推計に基づく、1980年から2070年までの18歳人口について下図を公表している(https://www.mext.go.jp/content/20240628-koutou02-000036781_5.pdf)。直近、2023年度の18歳人口の凹みは、1985年の丙午に相当し、当時は、その後1992年をピークとする第2次ベビーブームの後、崖を転がり落ちるように急速に減少し、あと10年でピーク時の半分となり、その後漸減していくことがわかる。 ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます 一方、大学の入学者募集を支援する業者による推計(https://www.pcpe.jp/blog/20240325-223/)によると、2021年度との比較で2034年度には全国の18歳人口が13.5%減少し、東北が顕著で、近畿圏も楽観できないが、関東と九州・沖縄の減少率は比較的目立たないことが述べられている。 18歳人口の減少に伴う医学部入学定員に関する国の検討における熊本県の位置付け 厚生労働省は、2024年1月から、「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開催しており、今年7月3日に開催された第5回の資料(https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001214420.pdf)によると、下図のとおり、医師の需給はあと5年から8年で均衡すると述べ、今後、医学部入学定員を削減することを提言し、一方では、医師の偏在対策については継続が必要と述べている。 ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます 同資料から、国の医師の偏在対策の基となる、以下の「人口10 万対 40 歳未満医師数と医師偏在指標」をご覧いただきたい。熊本県は、横軸の医師偏在指標により医師多数都府県に分類されているが、この医師多数都府県の中で、縦軸の人口10 万対 40 歳未満医師数は最も低いことがわかる。寧ろ、緑の水平な線の全国平均を下回っており、医師多数都府県以外の道府県と同等の状況である。 ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます 以下、この状況を、2022年医師統計のデータを基に検討する(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450026)。 ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます 2022年の熊本県の医師数は5,428人であり、人口10万対医師数は、全国平均274.7人に対して315.9人と比較的多い方である。しかし、その医師群の平均年齢は、全国平均50.8歳に対して53.5歳であり、全国4位の高齢な医師群により支えられている。これらの医師数を、医師数5,000~6,000人の県と比較し、大学医学部のある市と市外の状況を年齢階層別に検討した。 ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます まず、熊本県と、その隣県である鹿児島県とは極めてよく似た構造であり、共に40歳未満の医師数は各年齢階層で200~500人で、40歳以上70歳未満の各年齢階層の医師数よりも少なく、かつ、医師は大学医学部のある市(県庁所在地)に偏在している。従って、市外の医療は比較的高齢の医師で支えられているのが特徴である。次に、医師偏在化指標では医師少数県に分類される、新潟県、長野県、そして群馬県では、いずれも、市外の医師数の方が多く、県全体に医師がいることがわかる。しかも、長野県と新潟県は、25-29歳の医師の割合が400人以上であり、熊本県、鹿児島県に比べるとかなり多い。 ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます 最後に、岡山市と倉敷市に1つずつ大学医学部があり、医師多数県に分類される岡山県、仙台市に2つの大学医学部があり、医師多数県にも少数県にも分類されない宮城県と栃木県の3県、および医師少数県に分類される茨城県を示す。岡山県の医師の大半は、岡山市と倉敷市に偏在しているが、40歳未満の医師数が各年齢階層で500~700超と極めて多いのが特徴である。宮城県も仙台市に偏在するが、40歳未満の医師数は各年齢階層で500~600台と熊本県、鹿児島県に比べて多い。栃木県と茨城県は、県庁所在地に大学医学部がないという特殊な事情があるが、40歳未満の医師数は各年齢階層で500~700人と多いのが特徴である。 ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます ※上の画像をクリックすると拡大した参考資料をご覧いただく事ができます まとめ 以上、熊本県と熊本大学医学部が置かれた状況は、隣県の鹿児島県、鹿児島大学とともに、ほぼ同じ医師数である他の県と比較して、今後の18歳人口減少社会においては極めて厳しい状況であると言えるだろう。県とともに、これらの状況を踏まえた早急な対策を検討する必要があると考える。 |