*第22回* (R5.7.5 UP) | 前回までの掲載はこちらから |
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今回は大分大学での取り組みについてご紹介します。 |
地域医療構想を踏まえたこれからの医学教育 | ||||||
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大分県の二次医療圏は6つに分けられており、人口が最も多い中部医療圏(大分市を含む)の必要病床数は県内の45%を占めており、そこで従事する医師数は多いが、それ以外の5つの医療圏では、人口10万人当たりの医師数は全国平均をはるかに下回っている。大分大学医学部は県内唯一の医育医療機関であり、「豊かな人間性と高い倫理観を備えた医療人を育成し、先端医療の開発と安心・安全な医療の提供をとおして、地域社会の福祉に貢献する」という理念を掲げ、高度医療人とともに地域医療を担う医師の養成にも尽力してきた。かつて臨床実習の殆どは大学病院を中心に行われてきたが、医師偏在対策や地域医療構想とリンクさせて、本学でも地域病院や医師会、行政機関、さらに地域医療にかかわる様々な職種、地域住民の方の協力を得ながら、地域を現場とした医学教育を推進している。令和4年度改訂版のモデル・コア・カリキュラムでは、医師として求められる基本的な資質・能力として、「総合的に患者・生活者をみる姿勢」という項目が追加された。この資質・能力を涵養するためには、地域医療実習の充実を含めたカリキュラムの大幅な改訂が必要であり、ますます地域医療の現場での実習を発展させる必要性に迫られている。大分大学で行っている臨床実習について記述するとともに大分県の地域枠制度について紹介する。 1. 大分大学の地域医療教育 大分大学医学部では、地域医療学センターおよび医学教育センターが中心となり、地域医療現場での医学教育を実施している。1年次で行う介護体験実習、3年次の診療所実習、そして5年次は2週間の診療参加型地域医療実習と、段階的に医学的に患者さんと関わる役割を増やしていくように、実習を組み立てている。
2. 大分県の地域枠制度 医師・診療科の偏在を解消することは大分県にとって大きな課題であり、地域医療に貢献する医師を確保する目的で2007年度に地域枠制度が導入された。1学年13名で、現在まで地域枠入学者195名を受け入れている。義務年限9年間のうち4年間がへき地勤務となっており、令和5年度には44名の医師がへき地勤務に従事している。地域枠医師はどの診療科に進んでも良いことになっており、現地域枠医師74名のうち内科28名、外科8名、産婦人科5名、小児科7名、整形外科4名、皮膚科4名、耳鼻咽喉科3名、麻酔科3名、救急科2名、放射線科2名、形成外科2名、総合診療科1名、脳神経外科1名、泌尿器科1名、眼科1名、未入局3名である。ただし、地域医療では専門性とともに総合的な診療能力が求められる。患者さんは乳幼児から高齢者までと幅広く、また特定の臓器の疾患だけでなく、心理社会的問題を含めた様々なプロブレムに対応する必要がある。多疾患併存の患者も多く、それを適切にマネジメントできる能力も求められる。それを踏まえて、卒後3年目の医師は専攻する診療科に関わらず地域病院で総合的な診療に携わることとなっている。 3. 地域医療構想を踏まえたこれからの大分の医学教育 高齢者人口は大分市など都市部では2030年まで増加することが見込まれている一方、一部の地域ではすでに減少に転じている。独居高齢者が増加し、認知症の老々介護問題、訪問診療や緩和ケアを含む在宅医療など、大学病院では学べない医療がこれからの医療の中心となっていくことは想像に難くない。令和4年度版モデル・コア・カリキュラムに新しく記載された、医師として求められる基本的な資質・能力、総合的に患者・生活者をみる姿勢」という項目は、どのような場で学ぶことができるのかと考えると、それは患者が暮らしている地域で学ぶことが必然である、という答えにたどり着く。大学医学部と大学病院は人材育成と配置・派遣に関しては地域医療の視点を持つことが必要である。医学教育、特に臨床実習は、地域医療構想や医師偏在、働き方改革を意識して、社会のニーズに沿った形で変化させていかなければならない。大学病院は基本的に高度急性期病院であり、本学医学部附属病院の病床は全て高度急性期病床である。大学には高度医療を担う医師の養成が求められているのは言うまでもない。一方、地域病院に出向、あるいは派遣中の医師は地域病院の特色に合わせた診療の実施が求められる。つまり、自身の専門領域の診療とともに地域病院のニーズに合わせた診療を行える“幅”を持った医師を育成することが大学には求められている。社会システムとしての地域医療構想を学生に教育することは大変難しい課題であるが、かかりつけ医と病院との連携、中小病院と大病院との連携、入院医療と在宅やケアとの連携、専門性と総合性のバランスなどを教育する場を確保することが重要であり、地域医療機関、医師会、自治体の協力のもと、地域医療の現場での医学教育をさらに発展させていきたい。 |
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