*第20回* (R5.5.24 UP) | 前回までの掲載はこちらから |
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今回は高知大学での取り組みについてご紹介します。 |
地域医療構想を踏まえたこれからの医学教育 | ||||||
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1. 高知大学医学部の役割 昭和51年に前身の高知医科大学の開学以来、高知大学医学部は特定機能病院である医学部附属病院の運営、県内唯一の医育機関として多くの卒業生を輩出することで、県内の地域医療に大きな役割を担ってきた。 2. 地域医療構想と医学教育 地域医療構想は今後の人口減少・高齢化に伴う医療ニーズの変化を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制の構築を目指して推進されている。各医療機関は構想区域におけるそれぞれの担うべき医療の役割を明確にし、目指すべき地域の医療提供体制に近づけるように地域医療構想調整会議で継続的に調整をおこなっていくこととなっている。医療資源が有限であり、社会保障費の増大するなか、医療提供体制に効率性を求めるのは必定である。鍵となるのは医療の機能分化と連携であり、医療機能別の病床数の綱引きではなく地域包括ケアシステムの構築が重要であろう。 3. 高知大学の取り組み 前身の旧高知医科大学開学当時から、医学部附属病院だけでなく、関連教育病院である高知県立中央病院(現在の高知県・高知市病院企業団立高知医療センター)で3週間の臨床実習をおこなってきた。平成4年度からは、地域医療学実習として、へき地医療機関、保健所、福祉施設等で1週間の実習をおこなってきた。さらに、平成18年度からは、プライマリ・ケア実習(現在は総合診療部実習)として、1週間の市中のクリニック等での実習を開始し、平成20年度からは、EME初期臨床医学体験(1年生)として、半日×15回にわたるプライマリ・ケア医療機関、福祉施設、等での実習を開始した。平成21年度からは、関連教育病院である高知医療センターに限定せず、県内の臨床研修指定病院でもクリニカル・クラークシップを可能としている。さらに令和5年度からは6年生の選択制のクリニカル・クラークシップをそれまでの1週単位から3~4週の比較的長期の実習に変更した。また、正課外でも、平成19年度から中山間地において1泊2日でおこなう家庭医道場、平成21年度から地域枠学生を対象とした幡多地域医療道場を開始するなど、地域に学生が赴く機会を段階的に増やしてきている。
令和4年度には、文部科学省「ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業」に和歌山医科大学、三重大学とともに「黒潮医療人養成プロジェクト」を申請し採択された。このプロジェクトでは、地域ニーズを深く理解し、将来医師としてそのニーズに応える医療人材(黒潮医療人)を養成することを目標としている。医師不足地域に地域医療人材養成拠点病院を指定し、体験実習、長期滞在型クリニカル・クラークシップなどで複数年次で実習に訪れる他、アクティブラーニングコースとして地域ニーズを深く学ぶ学習機会を提供することを計画した。高知大学では、県立あき総合病院、県立幡多けんみん病院を地域医療人材養成拠点病院と位置づけ、すでに体験実習、長期滞在型クリニカル・クラークシップを開始している。また、2年次~4年次にわたる先端医療学コースに、本プロジェクトの研究班として、地域総合診療・疫学研究班、医療DX・データヘルス研究班、感染・災害救急医療研究班の3つを設置し、令和5年度から履修学生とともに地域をフィールドとした活動を開始し学びを深めている。特に共通の地域課題である南海トラフ巨大地震などでは三大学の連携した取り組みが期待されている。
4. 医師偏在対策と地域枠制度 高知大学では、平成21年度より入学定員増をおこない、学校推薦型選抜入試Ⅱ(四国・瀬戸内枠)として20人、前期試験の地域枠(大学独自枠)として5人、県内の医療に従事することを約束した学生を選抜している。詳細は、全国国立大学医学部長会議のシリーズ1「地域医療を支える国立大学医学部の役割」に掲載されている拙稿をご参照いただきたい。URL:https://www.chnmsj.jp/chiikiiryou_backnumber.html
5. さいごに 時代の変化に伴い、望ましい医療のあり方も変化してきており、医学教育も変革が求められている。多くの県内医療機関、行政、地域住民の協力なくしては、医学教育の充実を図ることはできないと考えている。この場をお借りし心より謝意を申し上げる。今後も地域特性に応じた教育を着実に発展させ、広い視野を持ち、地域に貢献できる医療人を輩出していきたいと考えている。 |
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