掲載記事への  感想・質問コーナー
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第24回 琉球大学の掲載記事への感想・質問(R2.6.25掲載)
○琉球大学医学部は、離島・へき地の医療格差を是正するために、地域の医療機関と連携しながら、地域医療を担う医師を養成することを使命としており、そのために早期から患者と接触する機会を持たせるカリキュラムを工夫されていることに、感銘を受けました。特に、1年次から臨床実習が始まる4年次11月までの間、ほぼ切れ目なく学生が患者と触れあうことができる教育プログラムを構築されており、我々の大学の臨床教育の改善を目指すに当たり大変参考になりました。3年次後期に離島・へき地医療の現場を体験させるために、全員が「離島地域病院実習」に参加するようですが、これは他大学ではなかなかできない取り組みと思われました。離島の中核病院や診療所の医師、スタッフの指導のもとに患者と接しながら、コミュニケーション能力を身につける機会となっているとのことですが、スチューデント・ドクターとなる前に、具体的に学生がどのような実習に取り組んでいるのか、是非、詳細を知りたいと思いました。また、地域医療を担う医師を養成するのみならず、ハワイ大学を含めた海外大学への実習も拡大することで、グローバルかつローカルに活躍する医師を育成することを目指していることも素晴らしいと思われました。ハワイ大学などとの連携に関して大変興味がありますので、詳細が分かればとても参考になります。
 一方、卒後の臨床研修においては、地域の管理型臨床研修病院、臨床研修協力病院、さらには離島診療所を含む研修協力施設とRyuMICという臨床研修グループを形成して、研修医が幅広い経験を積むことを可能としている点は、大変素晴らしいと思われました。さらには、RyuMIC以外の臨床研修病院群とも連携しながら、琉球大学医学部内に整備されたクリニカル・シミュレーションセンターを活用して、「沖縄県研修医対象シミュレーショントレーニング」、「レジデントデー」、さらには「研修医OSCE」等を企画され、沖縄県全体の医療人の育成に力を注いでいることも我々の大学にとって、大変参考になりました。
 今後も沖縄という地域の特色を活かしながら、地域医療を担う優秀な医師を養成するという使命を果たされ、我々の大学を含む他の大学のために広く情報発信をして頂ければと思います。
                                         (東北大学)
【琉球大学からの回答】
Q)3年次後期に全員が「離島地域病院実習」に参加するようですが、スチューデント・ドクターとなる前に、具体的に学生がどのような実習に取り組んでいるのか、是非、詳細を知りたいと思いました。

A)プログラム作成は、5つの各病院がご負担のないように計画出来る範囲で各々お任せしています。しかし、各病院ともプログラム作成に工夫をされていて、「各診療科の外来・手術・病棟見学(看護師さんの仕事介助も)、検査部・放射線部・リハビリ・地域連携室等の各部署見学、訪問診療・看護見学、関連診療所見学 等々」様々な多岐に渡る実習を実施して下っており、大学で各病院の担当教員が「実習前・後勉強会」を行っていますが、各学生達の実習後の成長を実感しております。離島・地域の病院の医師やスタッフから実際にお話も伺えることで、その地域の実状や課題を知り、柔軟な学生時代に将来の医師像を描けるようにもなるようです。なお、全ての病院のスタッフの方々が学生の教育に熱心で感謝しています。

Q)ハワイ大学などとの連携に関して大変興味がありますので、詳細が分かればとても参考になります。
A)現在、協定校のハワイ大学(アメリカ)、ミシガン州立大学(アメリカ)、タマサート大学(タイ)、台北医学大学(台湾)、南洋理工大学(シンガポール)への学生派遣及び受入を行っています。また、協定校以外からも学生を受け入れており、ドイツなど毎年多くの希望者から問い合わせがあります。海外からの学生を受け入れることで、本学学生にとって国際交流の機会が広がり、語学力及びコミュニケーション能力の向上に繋がっています。
 医学科では独自のチューター制度を導入し、担当の本学学生が海外からの学生の生活面や学習面のサポートを行っておりとても好評です。
 また、実習期間中は国際交流担当の事務職員によるサポートもあるため、安心して実習生活を送ることができます。
 なお、本学から海外への留学を希望する学生には、数ヶ月前に、英語で自己紹介や動機などの書類を作成・提出させ、英語の試験と面接を行っています。またハワイ大学からは、遠隔での面接もあります。これら全てに合格した学生のみを派遣しています。
○琉球大学医学部が、「医学に関する専門の知識と技術を修得し、高い倫理性を身につけ、医学・医療の進歩や社会的課題に柔軟に対応しうる医師、研究者を育成すること」という理念ならびに、「離島・へき地の医療機関と連携しながら、地域医療を担う医師の養成」という使命を達成すべく、地域との連携を図り、「オール沖縄」での人材育成を行っている姿が明らかにされております。卒前教育では、1年次からの患者との早期接触機会を多く持つことで、医療人としての自覚を高めることを目指しておられます。とくに、ハンセン氏病療養所の訪問による人権問題を考える機会を作り出していることや、全員の離島地域病院実習は、学生にとって非常に大きな体験と考えられます。琉球大学医学部構内に整備されたおきなわクリニカルシミュレーションセンターでは、4年次「ロールプレイ」や身体診察法の訓練だけではなく、卒後教育にも十分に活用されておられることがわかりました。72週間の臨床実習期間を確保されており、沖縄県内の地域中核病院や離島診療所等、地域での実習ならびに、ハワイ大学を含めた海外大学への実習というように、「グローバル&ローカル対応琉大ポリクリ方式」は、非常に評価されます。

 卒後教育において、地域の管理型臨床研修病院、臨床研修協力病院及び離島診療所を含む研修協力施設とともにRyuMIC群を形成し、県立病院群、民間教育病院による群星沖縄群を合わせた3つの臨床研修病院群が、互いに連携して様々な研修プログラムを提供していることは、それぞれの特徴や実績を活かした特色ある研修機会の提供となっていると考えます。さらに、県や県医師会とも協力し、「オール沖縄~赤瓦プロジェクト~」として全県一体型の研修体制を構築していることも素晴らしいことだと思います。これらは、「オール沖縄で人材育成!」というスローガンにあらわれていると考えられます。しかしながら、このように全県一丸となって医師教育に取り組む中、琉球大学医学部の卒業生が、実際に県内でどのように育っていっているのかについての実態については、あまり明らかではありませんでした。沖縄県のいくつかの病院は、全国の医学生の初期研修先として人気のあるところであります。その研修医のその後も含め、沖縄県の一体型プログラムによって作られる人材がどのような活躍を見せているのかということについても、知りたいところであります。

 琉球大学医学部を中心とした、卒前・卒後の様々な連携教育活動の実際をお示しいただきました。大学だけが教育の場ではないわけですから、これからの医学教育の重要なモデルとして、今後の参考にさせていただきたいと思いました。
                                     (東京医科歯科大学)
【琉球大学からの回答】
Q)琉球大学医学部の卒業生が、実際に県内でどのように育っていっているのかについての実態については、あまり明らかではありませんでした。沖縄県のいくつかの病院は、全国の医学生の初期研修先として人気のあるところであります。その研修医のその後も含め、沖縄県の一体型プログラムによって作られる人材がどのような活躍を見せているのかということについても、知りたいところであります。
A)卒業年によって差がありますが琉球大学医学部卒業生の50-70%程度が沖縄の研修病院で研修を開始し、その多くが専門研修も琉球大学を含めた県内の研修病院で行っています。卒業生の多くが専門研修中より、離島を含めた県内の研修病院を移動しながら地域医療を支え、専門医を取得後には、琉球大学はじめ各研修病院の専門領域で中心的役割を担いつつ、医学生や初期研修医の指導に当たっています。初期研修医のみならず専門医も県内の研修病院を行き来し人材交流することで、風通しの良い全県一体型の研修の実現につながっているものと考えます。
 ただし、他大学から初期研修医で沖縄に来られた医師が、専門研修は県外で行う場合も多く、初期研修医の数のわりに専門研修の定着が少ないのが問題となっております。
 今後、同窓会にもご協力を頂いて卒業生の進路等についてより詳細な調査を行う予定です。

1年次から3年次という入学早期においてearly exposureとしての幅広い臨床体験学習を実践しているところは大いに評価できます。また、沖縄の地域性を生かした「離島地域病院実習」が3年生の全員に実施されているところは意義深いと思われます。
Q)1年次の「外来患者付添い実習」「救急車同乗実習」、2年次の療養型病院、老人保健施設、特別養護老人ホーム、及び国立療養所沖縄愛楽園の見学などは学生全員を対象としたものでしょうか。
Q)教養あるいは基礎医学のカリキュラムが主体の1~3年次において地域医療機関での実習を組み入れるためにどのような工夫をされたのでしょうか。
離島医療現場においては、医師の総合診療能力が要求され、また医師不足問題や地域の過疎問題も大きいことから、3年次の離島医療実習では地域医療に理解を深める貴重な体験になっていると思われます。

Q) 離島実習の実施期間は何日間を設定していますか。

Q) 交通費や宿泊費の捻出はどのように行われていますか。

Q) その期間は3年生全員が一斉に行っているのでしょうか、あるいは時期をずらして実施しているのでしょうか。


 4年次11月から臨床実習が開始され、選択実習を32週間と長く実施できています。

Q) その結果「臨床技能が向上し、例えば、症例のプレゼンテーションを適切に行えるようになると考えている」との記載がありますが、実際の成果をどのようにして評価されていますか。


 4年次では9月〜10月中旬にかけて、模擬患者によるロールプレイ、身体診察法の訓練を行っており、他大学と比較して身体診察実習を早く開始できていると思います。

Q)臨床実習期間を確保するためにカリキュラムを前倒しした結果、夏季および春季休暇が圧迫されることはしばしば耳にします。学生は勉学が本分とはいえ、休暇期間に課外で得られる学びも人生の資質に大いに貢献すると考えられます。琉球大学では、1年次〜6年次まで、夏季および春季休暇はどの程度確保できているのでしょうか。


 琉球大学医学部附属病院において初期研修(臨床研修センター)と専門研修(キャリア形成支援センター)を総合臨床研修・教育センターとして管理運営するシステムは、卒後の初期・専門研修をシームレスに進めていくために学ぶべき体制であると思います。また、県内の3つの病院群が連携して相互交流が行われていることは素晴らしいことです。

Q)「全県一体型」とありますが、研修医の給与体系はどのようになっていますか(高知県など、どの病院に勤めても卒年によって同じ給与とする県もあります)。

                                      (徳島大学)

【琉球大学からの回答】
Q)1年次の「外来患者付添い実習」「救急車同乗実習」、2年次の療養型病院、老人保健施設、特別養護老人ホーム、及び国立療養所沖縄愛楽園の見学などは学生全員を対象としたものでしょうか。
A)これらの実習全て、その学年の学生全員を対象としています。(「救急車同乗実習」は、2020年度入学生より、1年次でなく臨床知識も得た4年次に行うことと改正しました。)

Q)教養あるいは基礎医学のカリキュラムが主体の1~3年次において地域医療機関での実習を組み入れるためにどのような工夫をされたのでしょうか。
A) 当学ではカリキュラムの改革を段階的に行い、2016(平成 28)年度入学生から、新カリキュラムを導入し、その特徴・工夫として(1)診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ)の拡充 (2)臨床実習 72 週間の確保 (3)1年次前期からの分子細胞生物学等の基礎医学科目の開講(複数の講座が水平的に複合して講義することで、早期に学生が、生命現象の物質的基盤を統合的に理解できるようになり、モデルコアカリキュラムや医学教育分野別評価基準に合致した改革となる。) (4)学体系(-ology)の科目構成から、臓器・器官系を基盤とした水平的統合科目や垂直的統合科目構成への移行 (5)すべての年次での患者と接触する機会の確保 (6) 1コマ90分授業から60分授業への変更、などが挙げられます。(「外来患者付き添い実習」は、開始時より夏休み実施としております。)

Q)3年次の離島地域病院実習の実施期間は何日間を設定していますか。
A)実習期間は、「実質平日の5日間(約1週間)」です。

Q)その交通費や宿泊費の捻出はどのように行われていますか。
A)この実習は学生にとって非常に大切であるとのことで、交通費・宿泊費の基本予算は大学予算から捻出してもらっています。但し、報告書代として全学生から2000円ずつは負担してもらい、航空機を使う地域は、さらに加算の負担金を数千円ずつ徴収しています。

Q)その期間は3年生全員が一斉に行っているのでしょうか、あるいは時期をずらして実施しているのでしょうか。
A)ずらして実施しています。3年次の12月から約3か月間、各講座、県外、海外施設で「医科学研究」を行っていますが、その最初の6週間ほどで、5か所の受入れ病院のご都合に合わせた人数を毎週派遣しています。

4年次11月から臨床実習が開始され、選択実習を32週間と長く実施できています。
Q)その結果「臨床技能が向上し、例えば、症例のプレゼンテーションを適切に行えるようになると考えている」との記載がありますが、実際の成果をどのようにして評価されていますか。

A)総括評価として、臨床実習後OSCEで評価しています。
各診療科あるいは5年次終了時に、形成的評価も今後検討しなければならないと考えています。
2019年度卒業生で、5年次と6年次の時に、症例のプレゼンテーションを適切に行えるかどうかについて、回答してもらったところ、5年次と6年次ともに自己評価ではありますが、8割以上がプレゼンテーションができるようになったと回答しており(今年度 医学教育学会発表予定)、今後はプレゼンテーションが適切にできなかった学生の対応も考えていかなければならないと考えています。


Q)琉球大学では、1年次〜6年次まで、夏季および春季休暇はどの程度確保できているのでしょうか。

A)以下の通りです。

  夏季休暇  春季休暇  の期間(2020年度) 
1年次  5W 5W  
2  4W 4W  
3  6W 5W  
4  6W 3W  
5  4W 3W  
6  5W  

Q)「全県一体型」とありますが、研修医の給与体系はどのようになっていますか(高知県など、どの病院に勤めても卒年によって同じ給与とする県もあります)。
A)給与体系は病院ごとに異なります。大学病院の研修医の基本給は県内では低い方になりますが、たすきがけプログラムも含め、ローテーションで3カ月以上大学以外の病院で研修する場合は身分移動し研修先の給与体系になります。
○沖縄県以外にも他県においても、離島及びへき地の医療については課題が多く散見されますが、沖縄県では
琉球大学がリーダーシップを発揮し、臨床研修病院群、沖縄県及び沖縄県医師会との連携がスムースに取れてい
て、地域の患者さんが困らないような支援ができていると感じました。他県の医学部の方々にも多数、読んでいた
だき参考にされれば幸いです。琉球大学医学部は、引き続き地域医療に貢献していただきたい。

                                              (匿名希望)