概要
本学医学部での卒前教育では、「6年間継続して地域で学ぶ医学教育カリキュラム」の方針の下(図1)、医学部と地域医療機関とが連携して学生教育に取り組んでいる。入学後早期のearly
exposureを目的とした「医療と社会」授業では、地域の医療機関、福祉施設を訪問する実習を行っている。第1-2学年地域基盤型保健医療教育では、医療人類学的手法を用いて地域の保健医療課題を調査する実習を導入しており、地域保健医療のステークホルダーである診療所医師へのインタビューや診療所見学を通して、臨床医学を学ぶ前の学生達が地域医療の基本を学習している。また、第1学年の授業では、非常勤講師として招聘された離島診療所やへき地診療所の医師が、学内での講義に参加している。第3-4学年では、PBLチュートリアル教育と並行して地域医療機関での見学型実習を実施し、paper
patient で学んだ臨床医学を実体験する機会としている。第4-6学年のクリニカルクラークシップでは、医学部附属病院と地域医療機関での実習を実施しており、県下32病院、11診療所が関係教育医療機関として学生教育に参画している。これらの地域医療機関での指導医には、臨床教授等の称号が付与され、2018年9月現在、臨床教授85名、臨床准教授96名、臨床講師241名が登録されている。
卒後初期臨床研修では、医学部附属病院と県内の初期臨床研修病院とが連携して、NPO法人MMC(Mie Medical Complex)卒後臨床研修センターを組織し、16の基幹型病院を含む45の地域医療機関と法人が参加をしている。MMCプログラムでは、すべての三重県内の基幹型研修病院が連携して、自由選択期間での約200の病院・診療科の選択を可能にしている(図2)。また、合同研修会の開催や研修医手帳の共通化などにも取り組んでいる。同センターの活動により、三重県内の初期臨床研修医数は着実に増加し、毎年100名以上の初期臨床研修医が県内研修病院にマッチングをしている。
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2018年度から開始された新専門研修プログラムでは、三重県内で25のプログラムが実施されている。そのうち17は三重大学附属病院プログラムで、2018年度県内プログラム登録者102名中95名が三重大学附属病院プログラムに登録した。医学部附属病院プログラムの内容は診療科毎の施設基準により異なるが、医学部附属病院を中心に可能な限り地域の基幹病院や小規模医療施設での研修を実施するよう地域循環型プログラムを推進している。
特色
卒前教育での関係教育病院と卒後の初期臨床研修病院、専門研修病院がほぼ一致するという状況のなか、卒前教育から卒後研修への移行を円滑に行うことができる地域特性がある。
本学では、2009年度から県内の医師不足地域を指定した地域枠推薦入学者選抜制度を導入しており、対象地域の首長、地域病院の院長、在籍高校長からの推薦を必要条件としている。当該学生には、毎年の夏期休暇中の推薦病院訪問を義務付け、学内での進路指導には推薦病院関係者も参加している。
医学部、三重県、公的医療機関を持つ市町村との連携による地域医療機関の維持発展を支える人材育成にも積極的に取り組んでいる。現在、3件の地域医療講座(県からの寄附講座1件、市町村からの寄附講座2件)が設置され、さらに、三重県市町村振興協会からの交付金による地域医療人材の育成に向けた事業を展開している。
問題点
地域内での質の高い教育・研修機能の維持と地域医療の持続発展との両立が理想であるが、人口減少と少子高齢化が進む地域社会にあっては、地域内での医師の偏在や診療科の偏在が進行し、地域内での均衡がとれた学生教育・研修医研修の場の確保が難しくなっている。
改善点
地域内での均衡ある医師の配置、ひいては学生や研修医を指導できる指導医の全県的な配置を実現するため、地域枠入学者の卒業後の地域定着に向けての進路指導を強化しているところである。人材育成は一朝一夕に行えるものではなく、中長期的な展望に立って地域医療の維持と地域医療機関での教育研修機能の強化に努めている。地域枠入学者選抜制度は、導入後10年以上が経過し、地域医療機関に勤務する地域枠卒業生の増加が期待できる状況になりつつある。
三重大学医学部医学科. URL: http://www.medic.mie-u.ac.jp/med/index.php
MMC卒後臨床研修センター. URL:https://www.mmc-center.com
三重大学医学部附属病院臨床研修・キャリ支援部 専門研修プロフラムの紹介. URL:
https://www.hosp.mie-u.ac.jp/mie-ccc/senmon/program/
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