*第40回*  (2021.7.26 UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は徳島大学での取り組みについてご紹介します。

卒前卒後の医学教育における徳島大学医学部と地域医療機関との連携
文責 :   徳島大学
赤池 雅史 医学部長
 徳島県は都道府県別の人口あたりの医師数で全国トップレベルであるが、医師の高齢化が進んでいる。2004年度に新医師臨床研修制度が開始されてから数年間は、徳島大学や徳島県を拠点に医師としてのキャリア形成を行う若手医師が約3割減少しており、その影響を受け、公的医療機関での要となる40歳前後の医師が少ないという問題が発生している。一方、徳島大学医学部では、運営費交付金の継続的な減額により教員数が削減される中で、診療参加型臨床実習、初期臨床研修および新専門医研修の充実等の教育負担の増加、大学病院の採算性の向上を背景とする診療業務の増大に直面している。
 このような困難な状況を打開するための対策のひとつに地域医療介護総合確保基金を活用した徳島県から医学部への寄附講座事業がある。現在、徳島県立海部病院を拠点とする「総合診療医学分野」が設置されており、医師不足と高齢化が特に深刻な南部医療圏の地域医療を支えるとともに、徳島大学病院総合診療部と一体となって、地域医療実習や地域医療研究に取り組んでいる。さらに、徳島大学病院には徳島県から産科婦人科、脳神経外科、外科、小児科、ER・災害医療、麻酔科に関連する6つの寄附講座が設置されている。徳島大学病院と徳島県立中央病院は、隣同士であるという全国的にも極めて稀な立地状況を活かしてブリッジで繋がることで1156床の総合メディカルゾーンを形成しており、寄附講座はこの環境を活用して、診療活動や地域医療に関する研究、人材育成に取り組んでいる。さらに、JA徳島厚生連から2講座、三好市から1講座の寄附講座が医学部に設置されたことで、徳島県全域の地域医療ならびに幅広い診療科を網羅できるようになった。一方、本学医学部は四国で最初の国立大学医学部として四国全体の地域医療を支えてきた。この歴史的背景に基づき、香川県高松市、四国中央病院、高知県厚生農業協同組合連合会からも寄附講座を設置していただき、それぞれ、高松市立みんなの病院(香川県高松市)、四国中央病院(愛媛県四国中央市)、JA高知病院(高知県南国市)を拠点として四国の地域医療に貢献している。これらの寄附講座の教員数は、特任教授13名を含め合計約50名に達しており、医学部・大学病院と地域医療機関における教育・研究・診療に多大な貢献を果たしている。特に本学医学部では、5年次1~3月に四国での学外臨床実習(8週間)を必修としており、これらの寄附講座はこの臨床実習において実習学生の指導を担当している。

 さらに、徳島県からの委託を受け、徳島県地域医療支援センターが徳島大学病院に設置されており、設置当初から病院長がセンター長を務め、また、医学部から医療教育学教授が副センター長で参画し、専門研修を担当するキャリア形成支援センターと一体で運営することで、地域枠学生・医師のキャリア形成と地域医療ニーズに対応した医師配置調整の両立に取り組んできた。現在、地域枠は一期生が卒後7年目であるが、修学資金貸与を受けた地域枠医師の制度離脱は無く、地域医療機関への配置が10名を超えるようになり、今後、20名程度の医師をコンスタントに地域医療機関へ配置できるようになる見込みである。これらの地域枠医師は、最大で7年間にわたり徳島県内での業務従事義務を一時中断し、国内外の留学を含め様々なキャリア形成に対応することが可能であり、期間終了後も徳島県の地域医療ならびにその教育・研究を推進するリーダーとして育成する方針である。

 本学医学部は、2013年に行われたミッションの再定義の中で、「自立して未来社会の諸問題に立ち向かう進取の気風を身につけた医師・医学研究者等の養成を積極的に推進する」、「徳島県のみならず四国地区の医師不足・偏在の解消に貢献するため、 地域医療の中核を担う医師の養成を学部段階からのキャリア形成支援を含めて積極的に推進する。」と定めている。この使命を果たすべく、今後も地域医療機関と密接に連携しながら、卒前・卒後教育に取り組む所存である。


徳島県地域医療支援センターHP  https://t-cm.jp/


写真右から順に徳島大学医学部、徳島大学病院、徳島県立中央病院。ブリッジで繋がり総合メディカルゾーンを形成しており、徳島大学医学部・病院と地域医療機関との教育・研究・診療の連携の中核ならびにシンボルとなっている。