島根大学医学部のミッションは、「プロフェッショナリズムを備え、地域だけでなく国際的視野を備えた医療人の育成」、そして「地域社会に還元できる基礎研究及び臨床研究の推進」です。そして、医療現場で自分自身を表現でき、指導者あるいは教育者となれる人材の育成を図っています。医学部HPに掲げられた「人を見つめ 地域を見つめ 未来につなげる」を信条とし、「俯瞰」と「さじ加減」を大切にし、ミッションを進めています。一方、島根県との連携は親密であり、県の支援会議、しまね地域医療支援センター、および医師派遣検討委員会などを介した意見交換および計画実施を協働しています。
地域医療教育 ~卒前卒後のシームレスな教育を目指して~ 【図1】
地域医療への動機付けを目的に、早期から地域基盤型の教育を行っています。具体的には、早期体験実習、地域医療学のカリキュラムを整備、そして臨床実習では県内70医療機関と連携した地域医療実習(必修・選択)を提供しています。この実習は4講座;地域医療教育学・地域医療支援学(島根県寄附講座)・総合医療学(島根県大田市寄附講座)・地域医療政策学が中心となり実施しています。6年間を通じて、地域医療の魅力を体験できる学びの場の提供と卒前卒後のシームレスな教育カリキュラムを目指しています。実習費用は医学部経費(宿泊・謝金)と医学部後援会(交通)から捻出していますが、財源不足は深刻で「次の一手」が必要です。
【図1】 |
|
病院内に設置されたクリニカルスキルアップセンターは、学内・病院内の教育だけでなく、県内の医療機関要望に応えて出張教育を展開しています。学部学生によるSCOP;
Skill Conquest and Output Programという活動が盛んで、全国BLS選手権では複数回の優勝歴があります。【写真1】
【写真1】 |
|
大学院に関しては、修士課程に「地域医療支援コーディネーター養成」と「医療シミュレータ教育指導者養成」に加えて、「地域包括ケア人材養成」の各コースを設け、博士課程にも地域医療・地域包括ケア指導者育成コースがあります。県内で専門研修を行う医師の増加に伴い、今年は定員を上回るほどです。
医療人育成 ~複数の視点・視座・視野からのアプローチ~
卒後臨床研修センターは、「広く診る・深く学ぶ~私たちは研修修了と専門医取得を確約します~」を掲げ、初期研修部門と専門研修等部門を設置し,卒後2年間の初期臨床研修から卒後3年目以降の専門研修へシームレスな移行を支援しています。また,しまね地域医療支援センターと連携し若手医師のキャリア形成支援と地域医療に貢献できる医師の育成を推進しています。県内で専門研修を行う専攻医は確実に増加しています。【図2】
【図2】 |
|
2016年に附属病院に設置された医師派遣検討委員会の目的は、地域の医療機関からの医師派遣要請等に対して,島根県全域の医師需要を勘案して,医師配置計画等の立案と地域における必要な医療提供の確保に資することです。この委員会には、島根県およびしまね地域医療支援センターからも委員が参加しています。2021年度の派遣実績は、増員30名、補充10名、交換36名、および研修9名となっています。
しまね地域医療支援センターの事業は、「医師のキャリア形成支援」、「充実した研修体制支援」、「研修医確保に向けた情報発信」、「ワークライフバランスの推進」、「医療機関との連携体制の構築」、そして「医師不足状況等の把握・分析」です。理事長は附属病院長が努め、私を含めた10名の専任医師が対象者220名のキャリア面談などに当たっています。県内8臨床研修病院の定期連絡会、センターマガジン発行などを通して、地域枠等学生・医師のキャリア形成および指導医の支援を行っています。今年度のトピックスは、2回の臨床研修指導医講習会を完全フルWebで実施したことです。
総合診療医センター ~総合医育成に向けた県内総合医の輝く絆~ 【図3】
白石吉彦氏(隠岐島前病院)をセンター長に迎え、新年度より附属病院に設置された総合診療医センターが本格的に動きます。今まで、学内の総合医療学講座が大田市立病院の総合医育成センターとともに推進してきた人材育成ミッションの大きな後押しにもなります。本センターは地域医療現場と大学を結ぶTeal型組織構造を持ち、診療・教育・研究の3機能を有し、総合診療医養成の戦略的プロジェクト(Teal型組織Neural
GP Network)を展開します。ネットワークを駆使した勇猛果敢な活動が楽しみです。既に、40症候のビデオ・オンデマンドのプロダクト作成が始まっています。
【図3】 |
|
「地域に根ざし、地域社会から世界に発信する個性輝く大学」が島根大学の理念です。そして、大学は学生とともに教職員の成長する場でもあります。「おごらず おこらず おどろかず(3つのO)」を実践するとともに、「俯瞰」と「さじ加減」を大切に、同じ志を持つ多くの仲間を募り、知性的な組織として展開する所存です。その際、“3つのFD“を装備したいと思います。すなわち、Functional
Diversity;創造性ある組織構築 ~もう一工夫の取組み~、Functional Delivery;人材育成 ~届く言葉を大切にする~、そしてFunctional
Development;情報共有と自問自答 ~次の一手を考える~です。
【関係URL】
|