*第10回* (H31.1.28 UP) | 前回までの掲載はこちらから |
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今回は京都大学での取り組みについてご紹介します。 |
卒前卒後の医学教育における京都大学医学部の地域医療への取り組み | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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京都大学医学部の理念と目標として、「単に既存の知識を応用して医療にあたるだけではなく、病気など医学事象の背後にあるものを見抜き、自分の頭で考え、新たな知を創出できる人間、また、広く社会と人間行動を理解し病める人の感情を洞察できる人間、社会全体の健康をめざし高い倫理観を持って行動する人間、これを人類すべてに発信できる国際性豊かな人間」の育成を掲げている。卒業時アウトカムとしては、「豊かな知識と技能」に加え、「医師としての使命感」や「他職種での協働」等を規定しており、こういった点において学生や研修医が地域に赴き、その土地特有の医療問題や患者のニーズについて学びを深める機会は非常に重要であると考えている。以下に卒前・卒後の具体的な取り組みを述べる。 卒前教育 京都大学では2013年からそれまでの旧「外来患者支援ボランティア実習」を改編し、早期体験実習Ⅰというプログラムを実施している。本実習では医学部医学科・医学部人間健康科学科・薬学部の1回生がチームになり、様々な地域医療の現場をフィールドとして学びを醸成する。学生は入学したばかりで医療についての知識・経験は殆どないが、実際の現場でプロフェッショナルの医療者たちの仕事に触れることで、自分たちが将来目指すべき医療者像を見出し、他の医療系学生との交流からチーム医療を学び、患者の視点について理解を深める機会となっている。実習終了後には、教員も交えて事後ワークショップを行っており、各々が見聞きしてきたことをチーム内でまとめ、他のチームと共有することで、経験学習を基礎とした多職種連携教育を体験している。
現在、臨床実習として医学科4年次1月から6年次10月にかけて74 週間の実習が行われている。この中で5年次の間に2週間の「地域医療/総合診療」の期間がある。本実習は2014年に医学教育・国際化推進センターが主体となり新設したものであり、大学の総合診療医と地域医療機関の総合診療医とが連携をすることで構築することができた。大学病院ではなかなか経験することができない初診の患者に対して、病歴・身体所見を重視しながら、臨床推論能力を涵養することや、多臓器にわたって複数の疾患を同時に抱える患者に対し、医学的のみならず心理・社会面にも配慮した診療を行えるようになることが本実習の目標である。学生は各々の医療機関で実習を行った後、最終日には大学に戻り、グループごとの振り返りを行い、ディスカッションを通して更に学びを深めている。
卒前の地域医療教育に関する質向上として、地域の中核病院などで行う臨床実習における学生評価を通して社会のニーズなどの意見を取り入れるようにしている。また、地域医師会(京都府医師会)や京都府地域医療支援センターとは連携を綿密にして、地域のニーズを認識しながら、京都大学のカリキュラムの改良に役立てるようにしている。 |