*第9回*  (H24.11.20UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は高知大学での取り組みについてご紹介します。

高知大学医学部の地域に貢献する人材育成について
文責 : 高知大学医学部長 橋本 良明 先生

 昨今、地域医療の問題が顕在化したことにより、地域医療に貢献できる医療人が求められています。とくに地方の大学にとっては、喫緊の課題となっています。
 平成20年度より政府は、緊急医師確保対策として医学部入学定員を増やし始めましたが、その後も段階的に有期限での増員が認められています。とくに、増員分の多くは、奨学金を受ける地域枠入学として、卒業後も地域に定着するような施策を講じることが求められるようになりました。
 高知大学医学部でも、平成21年度、医学科の入学定員を95人から105人(学士編入5人を含む)に変更いたしました。平成22年度には同112人、平成23年度から115人と増員しています。また、これ以前より、AO入試(平成15年度から)、地域枠入試(平成20年度から)をおこない、地域医療に貢献する意欲のある人材を選抜してきました。とくに地域枠は、平成21年度の入学定員増にあわせて高知県医師養成奨学資金を受けることを義務付けています。(学士編入の地域枠を除く)
 この奨学資金制度は、地域枠学生以外でも高知県の医療に貢献する意志のあるものは審査のうえ受けることができます。現在、1年生から6年生まで83人の学生がこの奨学資金を受けています。すでに11人が卒業し、初期臨床研修中もしくは指定医療機関での勤務をしています。今後、学生、卒業生とも急激に増えていき、10年後の平成34年には学生130人が在籍、200人を超える卒業生が地域で活躍するようになる見込みです。これは、高知県の医師の10%を占めることになります。(図)
 さて、こうした学生には、意欲を持ち続けて地域に貢献する人材になってもらう必要があります。単に義務で縛ると考えるのではなく、地域医療のリーダーとなってもらうよう医療人として成長していただきたいですし、勤務しやすい環境を整えていく必要があります。そのためには、将来のキャリア形成を支援したり、奨学資金制度をより良いものになるように大学として高知県と協議したり、学生の日常の相談に乗ったりすることが重要だと考えています。もちろん、地域医療教育の充実は不可欠ですが、これは奨学資金受給学生だけでなく、すべての学生を対象におこなうべきものと考えています。
 平成21年度より、地域枠学生等アドバイザーワーキンググループ(以下、WG)を組織し活動をおこなっています。平成21年度からおこなっている幡多地域医療道場は夏期休暇中の地域医療実習として定着しました。また、平成22年度には奨学金の義務期間に初期臨床研修の期間を含めることについても高知県に要望し制度変更がされました。平成21年11月、平成23年10月には高知県の尾﨑正直知事が来学され、奨学金受給学生たちと意見交換もしていただきました。

 
 (図)

また、奨学金受給学生たちは自主的に卒業後を見据えて仲間づくりを始めてくれています。各学年の代表者を中心にメーリングリストを運用し学生同士の意見交換をおこなうほか、WGの教員たちとも懇親会を開催しています。
 このように高知大学では、高知県と密接な関係を保ちながら地域に貢献する人材の育成を目指しています。さらに、平成23年12月には、医学部に地域医療支援センターが設置されました。これは厚生労働省が全国に設置を目指しているものですが、平成23年度に高知県を含む15都道府県で先行的に設置されたものです。地域医療支援センターの業務の一つに地域枠学生のキャリア形成支援があり、今後の更なる充実が期待されます。
 関係者の皆様におかれましては、今後とも御理解、御協力をいただきますようお願い申し上げます。
                      (協力:家庭医療学講座 教授  阿波谷 敏英 先生)