*第39回*  (H27.8.10 UP) 前回までの掲載はこちらから
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る
今回は山口大学での取り組みについてご紹介します。

山口大学医学部の地域医療人育成の取り組み
文責 : 山口大学医学部長 坂井田 功 先生
             
 山口県においては、医師不足とともに、医師の高齢化が進んでおり、地域医療を担う人材育成及び確保が課題となっている。
 山口大学医学部医学科の入学者数の動向は表1のとおりで、定員は、国の政策によって平成21年度から増員となり、現在は107名(学士編入生除く)となっている。これは主に、山口県医師修学資金貸与による増員によるもので、入学に連動した貸与者数は14名(島根大学枠を除く)になる(緊急医師確保対策枠5名、地域医療再生枠9名)。

 山口県内出身者(実家の所在地による)は、地域枠(推薦)および県修学資金制度により、平成18年度の17名から増加し、平成25年度には最大の39名となった。この数年、入学者の約3分の1が県内出身者であり、その大半は、地域枠または県修学資金貸与者であることから、推薦の地域枠や県修学資金等に伴う入学定員の増加によって、県内からの入学者数が増加したことがわかる。
 しかし、平成19年度から地域枠(推薦)により県内出身者の入学が増加したが、必ずしも県内研修病院のマッチング数の増加に結びついてはいないことから、県内出身者の入学者数はどの程度が望ましいのかという議論も必要である。
 

 定員増にあわせて、平成20年度に地域医療学講座を設置(平成22年度に地域医療推進学講座に変更)し、以下のような体系的な地域医療関連教育・研修の基盤作りを行った。

 

(高校生を対象としたセミナー)
 県内の高校生の医師になる動機を高め、山口大学への進路を希望する高校生を増やすため、平成23年度より「高校生を対象とした医療現場体験セミナー」を実施した。平成26年度は、山口・防府、周南・徳山、萩の3ヶ所で開催し、72名の高校生の参加があった。
(卒前教育)
 「地域医療学(講義)」では、地域医療に携わる学外の講師による講義を行っている。また、平成22年度より、自治医科大学と合同で開催している「地域医療セミナー」には、平成26年度は、地域医療に興味のある学生10名、自治医科大学から11名の山口県出身の学生が参加した。
 平成22年度より3年生の希望者を対象に始まった「地域包括医療修学実習」では、以下の山口県内の医療機関において、地域医療に特化した実習を行った。平成26年度からは全ての学生に必修化し、4クールに分かれ、116名が実習を行った。

 

 さらに、5年生の臨床実習Ⅰ(ポリクリ)の一環として平成25年度から開始された「地域医療実習」は、診療所や小規模病院等で1週間の臨床実習を行うもので、大学近隣の他、遠隔地の医療機関にも学生の受け入れをしていただき、平成26年度は遠隔地系に16名の学生が参加した。
(卒後教育・研修)
 県内の臨床研修病院では、それぞれが独自の地域医療研修を行っており、必ずしも、標準化された研修が実施されているわけではなかったため、平成23年度から、県内の地域医療機関での初期研修における「地域医療研修コース」を設け、研修の企画・準備・実施を行った。この地域医療研修は、1ヶ月間、二次医療圏を単位に、病院、診療所、市町村保健センター、その他の関係施設が連携して、研修医を受け入れるもので、各地域ではプログラム責任者と事務局が設置され、研修医の受入れや日程調整等を行った。各実習施設において、地域医療での経験が豊富な医師(日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医等)が研修指導を行い、県全体として、プログラムの標準化と質の向上を図るよう努めた。平成26年度は、萩、周防大島、下関、美祢、長門の5地域で開催し、31名の研修医が参加した。

 このように山口大学では、入学前、卒前(学年に応じた多様なカリキュラム含む)、卒後まで、体系化された地域医療関連教育・研修を行うことで、地域医療マインドを持った医師の養成と確保に努めており、今後も取り組みの成果を検証しながら、時代に即した地域医療教育に取り組む予定である