*第29回* (H26.8.29 UP) | 前回までの掲載はこちらから |
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今回は東京医科歯科大学での取り組みについてご紹介します。 |
地域医療を支える東京医科歯科大学医学部の役割 | |||||||||||||||
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東京医科歯科大学は東京都心に位置するが、東京都内のみならず近隣の各県の地域医療に大きく貢献している。その具体的な5つの事項について紹介する。 1. 地域特別枠推薦入試について 国の「経済財政改革の基本方針2009」を踏まえた医学部入学定員増に伴い、茨城県及び長野県と連携し将来両県の地域医療を担う人材を育成することを目的として、平成23年度より地域特別枠推薦入試(茨城県枠年2人、長野県枠年2人)を実施している。卒業後各県で働くことを条件として県奨学金が年間貸与される。これらの制度で、両県で医療に参加する人材が多くなることが期待される。 1)茨城県枠 茨城県と連携し将来茨城県の地域医療を担う人材を育成することを目的としている。茨城県地域枠入学者として入学する者に対し、15万円/月が茨城県より貸与される。茨城県内の高等学校の卒業・卒業見込みの者、または保護者が茨城県に居住しており茨城県外の高等学校を卒業・卒業見込みの者が対象で、県が定める医療機関で9年間勤務(臨床研修期間を含む)した場合には返還は免除とされる。出願要件は、学校長の推薦、学習成績がA段階、「茨城県地域医療医師修学資金貸与制度」に応募し、茨城県による面接で合格することと規定されている。 2)長野県枠 1)と同様の目的で、長野県の地域医療に貢献する熱意と能力を有する者で、学校長が責任を持って推薦できる者、そして長野県が実施する「長野県医学生修学資金貸与制度」に応募し、長野県による面接を受け合格した者が対象となる。貸与月額は20万円で、長野県知事が指定する医療機関における業務に、貸与期間の1.5倍に相当する期間(臨床研修期間を含む)従事した場合、全額返還が免除される。 2. 地域特別枠対応委員会について 地域特別枠対応委員会は、東京医科歯科大学医学部教授の中から選出された、同委員会委員長1人、茨城枠と長野枠の同委員会委員各々1人、そして茨城県・長野県側から参加する同委員1人とオブザーバーによって組織され、本学内で年2~3回開催されている。特別枠で入学した学生には「地域医療学習プログラム」、すなわち各県内の講義、演習、実習(県主催の地域枠合同セミナー、演習、地域の診療所実習)の参加を課し、その単位数を1.0単位に設定している。このプログラムへの出席状況は、逐一この委員会で各県側委員より報告され、また学内委員からは地域枠学生の試験成績や修学状況などが報告されている。現在各県枠8人ずつ計16人の学生が修学しているが、本委員会終了後には地域枠学生全員を招集し、委員会メンバーとの交流を図っている。 3.小児・周産期地域医療学講座について 平成21年度からの地域医療再生計画に呼応し、茨城県の土浦協同病院と本学の周産期医療の充実を図る目的で、小児・周産期地域医療学講座が平成22年度より開設された。これは茨城県から委託された産科と小児科による寄付講座であり、両科それぞれに特任の教授、准教授、講師(助教)が計6人設置され、さらに本学と土浦協同病院間に情報通信ネットワークが構築された。これにより、茨城県の地域小児・周産期医療を支える新しい人材が育成され、本学と土浦協同病院間における情報共有化(IT)と教育研修を支援するシステムが活性化している。寄付講座設置後の4年間で、東京医科歯科大学医学部附属病院の周産期医療は充実し、土浦協同病院での小児科・産婦人科の勤務者も大幅に増加し地域医療に貢献している。 4. 卒前・卒後教育での貢献 卒前臨床実習では、1週間の診療所実習を必修としている。これにより、臨床実習を行う全ての学生が、都内および近郊の16の診療所で地域医療を体験している。 卒後臨床研修では、都内および近郊の9つの診療所での地域医療研修に加えて、秋田大学および島根大学と連携した交換研修を実施している。この連携により、本学の研修医が、秋田では横手市立大森病院、島根では浜田市国保診療所および公立邑智病院で研修する機会をもつことができ、地方の医療過疎地域での経験を積むことが可能になっている。また、秋田大学および島根大学の研修医は、国立大学病院で最多の救急車受入数を誇る本学の救急救命センターで研修する機会をもつことができ、都会における三次救急の経験を積むことが可能になっている。 5.東京の救急医療への貢献 東京医科歯科大学医学部では5−6年次に救急でのClinical Clerkshipを4週間行っており、常時7−10名の医学生が診療チームに加わり救急診療を学んでいる。また初期研修医は常時10名以上がローテイトしてきている。ERでの教育の目玉は初期診療である。医学生と初期研修医は搬送された軽症救急患者の初期診療をノーヒントで担当する。患者の鑑別診断をリストし診療計画を立案することをゴールに、自ら行った問診と身体診察の情報と医学知識を総動員して、自立的に臨床推論を行い、教員にプレゼンテーションしフィードバックを受ける。故鈴木章夫元学長は「ERのない教育病院はありえない」と本学に教育的な救急部門を作ることを推し進められた。その遺訓は今もERの教育に息づき、総合診療と救急診療の最初のシードを若き医学生と初期研修医たちに植えつける役割を担っている。 |