*第18回* (H25.9.3UP) | 前回までの掲載はこちらから |
地域医療を支える国立大学医学部の役割トップページへ戻る | |
今回は鳥取大学での取り組みについてご紹介します。 |
鳥取大学医学部の地域医療人育成の取り組みについて | |||||||||||
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1.地域医療教育の概要 2.地域医療学教育の特徴 従来の医学教育は、系統講義で疾患概念を理解しクリニカルクラークシップとして大学病院の各専門科で臨床実習を行ってきました。大学病院は、稀な疾患や先端医療技術を要する診断治療などを学習するには最適の場です。しかし、生活習慣病といわれる糖尿病、高血圧、骨運動器疾患など、長期的な視点でじっくりと患者にむきあうタイプの疾患を経験する機会はきわめて少ないのです。高齢者は複数の疾患をかかえており、医療費・服薬・介護のトラブルが多発しています。今後は、医学全体がこのような統合的なアプローチを求められる時代になってくると思われます。地域医療学はその水先案内人にあたります。地域医療の教育では、専門別に細分化された大学病院だけでは不十分であり、地域の病院・診療所・行政機関・福祉施設などに出かけて現場スタッフと接し、頻度の高い疾患(common disease)や高齢者特有の病態を経験させたいと考えています。この実現のためには、大学病院内だけでの臨床実習では不十分であり、地域医療実習のような地域基盤型実習が不可欠です。地域医療学講座は、地域の第一線(クリニック、自治体病院、地域中核病院、行政、介護関連施設)の先生方のご協力をいただきながら、上記目標の達成をめざし教育に取り組んでいます。 具体的には、1・2年でのヒューマンコミュニケーションでは近隣保育園を訪問し、幼児保護者と接してコミュニケーション訓練をおこない、高齢者施設では認知症患者と1:1で接します。早期体験実習では近隣のクリニックを訪問しプライマリケアの姿をみること、3年生での基礎配属では学生とともに自治医大を訪問し同じ立場の学生たちと交流、離島実習では島根県隠岐島の病院を訪問し離島医療を体験してもらいます。3年生の社会医学チュートリアルでは、近郊の大山町や日南町を訪問し家庭訪問を行うなかで生活や介護など医療以外の課題をみつめることを訓練します。4年生の地域医療体験では、鳥取県内のクリニック・自治体病院を訪問し、さまざまな環境での地域医療機関が地域包括ケアでどのような役割を果たすのか学習します。6年生での臨床実習II(学外総合病院演習)では、地域中核総合病院に2週間滞在してより臨床に即した実践的な医療を学習します。このなかで、従来から継続しているヒューマンコミュニケーションは鳥取大学医学部特有の教育手法であり、コミュニケーションスキルとマインドを保育所や老健施設の実践の中から学ばせるものです。今後は、この教育手法を地域社会へ応用し、地域保健福祉を担う保健師や介護福祉士とともに地域で学ぶフィールドを開発し、患者ケアの学習、コミュニケーション能力やプロフェッショナリズムの育成をすすめたいと考えています。 また今後の専門医の制度設計のなかで、高齢者を含む広範な地域医療課題に対応できる総合診療専門医が基本領域の一つに決まっています。鳥取大学として、この総合診療医育成に対応するため、鳥取県西部圏域を中心とした総合診療医育成プログラムとそれを支える地域医療機関群(コンソーシアム)を作り、最初のひな型としてプライマリケア連合学会認定の家庭医療後期研修プログラムを申請予定です。総合診療医をめざす学生や研修医にとって研修効果の高い環境づくりに取り組んでおります。 なお、このような地域医療教育に関連した費用は、総合医学教育センターの予算(大学予算)ならびに鳥取県寄付講座予算から捻出しています。 3.今後の課題と展望 地域医療教育は、到達目標や評価方法が確立していない教育分野であり、知識だけではなく、ものの見方や考え方が問われる局面が多い分野です。講義と実習に加えてグループワークなどの新しい教育手法も取り入れつつ、地域医療を担うマインドや技能を啓発する努力が大切と考えています。特に保健・医療・福祉を包括的にとらえる地域での総合保健活動の実践を通じた教育体制を作ることが、地域医療教育基盤としての最重要課題と考えます。 ■鳥取大学医学地域医療学ホームページURL:http://tiiki.med.tottori-u.ac.jp/ |