*第13回*  (H25.3.28UP) 前回までの掲載はこちらから
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今回は弘前大学での取り組みについてご紹介します。

地域医療を支える弘前大学医学部の取り組み:
「専門医養成病院ネットワーク」について
文責:  弘前大学大学院医学研究科長・医学部長 中路 重之 先生 
             

 弘前大学医学部はいわゆる「新八」に属し、旧二期校である。その歴史は60年を超え、昭和19年の青森医学専門学校に始まり、昭和23年の弘前医科大学を経て、昭和24年に弘前大学医学部として出発した。その後、平成16年に独立法人化され、平成19年に部局化され、弘前大学大学院医学研究科として出発した。
 弘前大学の最大の特徴は青森県という地域に根ざした大学というところである。新設医大が増えた際、「1県1校」が流行したが、まさにそれを地で行く医学部である。県下の主な病院がいわゆる「関連施設」であり、一部の病院(八戸市民病院、八戸赤十字病院、十和田市立中央病院、五戸総合病院)で他学出身者が主のところもあるが、それとて弘前大学出身者が多くの診療科で活躍している。

 そのような地域性も有り、本医学部では全国に先駆けていわゆる地域枠の入学制度をとり始めた。時期も最も早かったが、その人数も全国一であり、平成25年度の入学者から62名となった。内訳は、AO入試40名、学士編入学生5名、前期入試青森県定着枠17名である。この地域枠の効果として、青森県内出身者の入学が毎年40-50名となった。

 どこの地方医学部でも行われていることであろうが、卒業した医師は、大学と関連病院を往復(循環)しながらその技量を高めていく。大学で高度の専門知識を学び、関連病院で一般疾患を経験していくという図式である。また、郷土愛を育成し、またさらに言えば薄給の大学勤務の経済的補填をするという意味合いも正直ある。

 臨床医の育成には医学部の果たす役割は大きい。先端の医療や研究に触れること、教育者として医学生と接すること、大学院で研究し医学博士を取得すること、専門医や各種学会の認定医の資格を取ること、などなど、医学部にしかないものが多く、それに触れ合うことで医師としての力量が増し、深みが出てくる。単に「地域医療のために医師配置を考えて」医師を動かすという発想からは良医は生まれないことは間違いない。

 弘前大学では、医師の育成は卒後教育を含めた医学教育の一環として進められるべきものであり、プライマリケアから先進医療までを包括した幅広い医学的環境の中で実現されるべきものと考え、「専門医養成病院ネットワーク」というシステム作りを行っている。これは医学部と医学部附属病院が中心となって、青森県内の自治体病院等と研修医教育及び専門医養成のためのネットワークを形成し、若手医師の循環型キャリアアップ体制を整えることを目的としたものである。卒前・卒後教育を切れ目なく実施することにより、しっかりとした総合的能力を基盤として、専門性を確立していくというもので、個々の医師が地域社会から求められる医師として、自己確立を実現するためのシステム整備である。数年中にはこのネットワークを利用し、青森県内の主要自治体病院等との密接な連携体制の構築を目指しており、その先に地域医療の充実があるのならばこれまさに理想的な展開となるであろう。